後援会の事務所開きで祭壇に向かう古口氏(右から2番目)=25日午前、茂木町茂木

 任期満了に伴う茂木町長選は7月5日の告示まで1週間となった。無所属の現職古口達也(こぐちたつや)氏(68)=自民推薦=のほかに立候補の動きはなく、3期連続無投票による6選が濃厚となっている。5期20年の実績に対する評価は高く、「代わりは誰もいない」という声ばかり聞こえてくる。過疎の町をけん引する人材探しの難しさもあり、多選批判にはつながっていないのが現状だ。

 「在職20年だが、長いだけで『続投は違う』とはならない。町政を託すにふさわしい」。3月30日午後、町議会議長室。七井裕司(なないゆうじ)議長はきっぱり言った。

 この日、七井氏も所属する町議会最大会派「政和会」は古口氏に昨年末から数えて3度目となる出馬要請を行い、事実上受諾の返答を得た。安堵(あんど)の表情の磯稲蔵(いそいなぞう)会長は「今は世代交代は考えない。それが町民の声」と民意を代弁してみせた。

 県町村会が把握する範囲で、県内で6期務めた町村長は戦後5人。故若林英二(わかばやしひでじ)元国分寺町長ら7期務めた町長が2人おり、古口氏が当選すれば、それに次ぐ多選となる。

 2010年の町長選で古口氏に挑んで敗れた森島修一(もりしましゅういち)町議は「(人口減少が進み)諦め感が強い町を背負うのは勇気が要る。中央に太いパイプがあり、やりたいことができる人は町にいない」と無風の背景を解説する。

 県町村会長の古口氏は全国に11人いる全国町村会副会長の1人で、各省庁所管の12の公職にある。「(古口氏は)本省の課長以上の職員の名前は全て覚えているはず」と町職員が舌を巻くほど、小さな町のトップが水面下で官庁街を奔走している。

 町は過疎の町に有利な過疎債などで国の予算を上手に引き出し、人口1万1千人余りの町で県内同規模の町より年間約10億円以上多い事業を行っている。

 古口氏は新型コロナウイルスの流行が始まった一昨年3月、政府の方針に異を唱え、県内で唯一、町内小中学校の臨時休校見送りを決断し、注目された。町選出の山形修治(やまがたしゅうじ)県議会議長は、こうした判断力と発信力を一例に挙げ、「県政レベルでも『あの町長は違う』という評価につながっている」と存在の大きさを指摘する。

 今月25日、後援会の事務所開きを行った古口氏。多選について「『権腐(不)十年』を『多選は悪い』と解釈する人もいるが、自分への戒めの言葉として町政に向かう」と力を込める。側近の一人は「町長に頼り過ぎているところはある。後継者を探さないと。町長ともそれは話している」とした。