「とちぎ男女共同さんかくねっと」の設立記念で、自らの過酷な被虐待経験を語るあゆぞうさん=4月中旬、宇都宮市駒生1丁目

 児童虐待防止などを目指す一般社団法人「とちぎ男女共同さんかくねっと」(永田勝美(ながたかつみ)理事長)が17日までに、宇都宮市鶴田町を拠点に設立された。親からの壮絶な虐待を生き抜いた「虐待サバイバー」の経験を伝える活動を柱の一つに据え、虐待の発生や深刻化を防ぐための支援を行う。県内の児童虐待件数は、高止まりの状況にある。子ども食堂の運営なども併せ、複数の悩みを抱える子育て世代を多面的に支えていく。

 「小学2年の時、両親が家に帰ってこなくなった。食事も与えらえず、風呂にも入れず…学校で助けを求めても先生は母を信じた。誰も信じられなくなった」

 4月中旬、市内で行われた設立記念講演。虐待体験を全国で語っているあゆぞう(本名・関歩夢(せきあゆむ))さん(35)=東京都在住=が打ち明けた幼少期の過酷なネグレクト(育児放棄)経験に、集まった医療従事者や民生委員ら約20人が真剣な表情で聞き入った。

 大澤里香(おおさわりか)副理事長(57)は「虐待という言葉が一人歩きし、世の中に実態が知られていない。経験談を通じて大人がそれぞれの立場でできることを考えてほしい」と訴えた。

 県警が2021年に認知した児童虐待件数は392件で、被害児童数565人と合わせて高止まりしている。12日には、8歳の次男の脚や腕などを金属製パイプで殴ったなどとして、宇都宮市、30代の父親が傷害容疑で逮捕されている。

 大澤さんらは19年から子ども食堂「Kiitos(キートス)」を運営してきた。経験を生かし、当事者への支援に加え、周囲を啓発することが虐待の深刻化や見逃しを防ぐと考え、活動の幅を広げようと21年10月に法人化した。

 今後は学校での出前講座にも力を入れていく。紙芝居を活用し児童生徒にSOSの訴え方、教員らに気付き方を教える。さらに医療機関とも連携し、子育ての重圧や負担を解消する相談支援や就労支援も行う。

 大澤さんは「点ではなく面で支援しなければ、複雑に絡み合った問題を抱える当事者を助けられない」と力を込めた。