畑から取ってきたトマトを井戸水で冷やし、塩を振り掛け、一気にかぶり付く。せみ時雨の騒がしさの中、強烈な日差しを浴びて汗まみれだった。青臭くて酸っぱくても、うまかった。もう50年も前の話だが、舌の記憶は鮮明だ▼トマトは夏野菜の代表格で季語にもなっているものの、それは露地物。現在は施設園芸が多くを占め、10〜7月に収穫する冬春トマトが中心となった。今が出荷の最盛期で、しかも5月は特にうま味が濃いとも▼本県は熊本、北海道などに続く全国屈指の産地である。単位面積当たり収量は全国平均の2〜3倍と、栽培技術もトップクラスと言っていい▼栃木市田村町のサンファーム・オオヤマは、情報通信技術(ICT)を活用する。最先端を行く生産者で、コンピューターを使い温度や湿度、給水、採光などを管理する。蓄積された日々のデータを改善に生かす▼1ヘクタールの大規模作付けで、10アール当たりの収量は35トン前後。約3メートルの高さにつるす長期多段どり栽培では茎1本に100個近く実が付く。この時期、1日おきに3〜4トン出荷する。糖度と酸味のバランスなど味も格段に進化している▼「トマト栽培は若手が頑張っており、今後も楽しみ」と大山寛(おおやまゆたか)会長(71)。季節感は乏しくなったが、一年中、甘いトマトが手に入るのだから、それが一番だろう。