モスクワの赤の広場に集結した戦車隊が、クレムリンに向かって進んで行った-。1991年8月19日、旧ソ連の共産党保守派が、同国のゴルバチョフ大統領に辞任を迫るため、軍事クーデターを起こした瞬間だ▼写真家の桑原史成さんは、この歴史的現場に遭遇。それ以降、エリツィン・ロシア大統領(当時)がクーデターを鎮圧して実権を握り、バルト3国やウクライナなどが次々と独立してソ連が消滅していく過程を撮影した▼東京・丸の内で開催している桑原さんの写真展「“赤い帝国”の崩壊」を見ると、世界を震撼(しんかん)させた大国瓦解(がかい)の様相がよく分かる▼未曽有の混乱の中、ロシア経済は破綻状態に陥った。この頃、プーチン・ロシア大統領は国家保安委員会(KGB)を辞職。一時、自家用車で非正規のタクシー運転手をしていた、と国営テレビの番組で語った▼プーチン氏はまた、ソ連崩壊でロシアは40%の領土と国民を失ったと指摘し、「悲劇だった」と発言している。ウクライナ侵攻の背景には、領土を取り戻したいという野望があったのだろうか▼経済制裁強化で、ロシアは経済危機に再び見舞われるとの予測がある。ソ連崩壊を目撃した桑原さんは「歴史は繰り返すという。困窮した民衆が立ち上がった時、ロシアはまた大きく変わるのではないか」と話している。