故渡辺美智雄(わたなべみちお)副総理が、1985年に箱根で開いた派閥横断的政策集団「温知会(おんちかい)」の研修会に、まだ国会議員になる前の石破茂(いしばしげる)元自民党幹事長が参加した▼渡辺氏は講演の中で「君たちは何のために政治家でいるのか。または政治家になろうとするのか」と問い掛け、「先生と呼ばれたいのか、金がほしいのか。そんな奴は今すぐここから去れ」と断じた▼続けて「政治家の使命はただ一つ。勇気と真心を持って真実を語ること。それしかないのだ」と語った。感銘を受けた石破氏は講演の録音を繰り返し聴き、政治活動の原点となった。先日、都内での講演会で石破氏が明かしたエピソードである▼9月の総裁選に向け、構図が固まりつつある。事実上日本のトップリーダーを決める選挙は、安倍晋三(あべしんぞう)首相と石破氏による一騎打ちとなる見通しだ▼講演で石破氏は「今回無投票になれば総裁選が6年間行われないことになる」「私は正直で謙虚で誠実で、国民の思いに添う自民党でありたいと思っている」と「安倍1強」体制への危惧を示していた▼石破氏に影響を与えた渡辺氏が、1991年の総裁選に初出馬した際「今、手を打たなければ日本は必ず衰退する」と訴えていた姿を思い出す。難題山積の日本の将来に2人が今回どんな処方箋を示すのか。政策論争をじっくり聞いてみたい。