「地球にやさしいお肉」を発売した前田牧場の直売店

 肉牛のふん尿から出る温室効果ガスの量を減らす効果があるとして、栃木県畜産酪農研究センター(那須塩原市千本松)と前田牧場(大田原市奥沢)が、実証試験としてガス発生成分を抑えた飼料で育てた牛の食肉販売が4月29日に始まった。同牧場が大田原市若草1丁目の直売店で「地球にやさしいお肉」として販売している。通常の牛肉より2割ほど割高だが、関係者は持続可能な畜産の実現につながることを期待している。

 実証試験は、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、農林水産省の委託プロジェクトとして2017年度に始めた技術開発事業の一環。農研機構は肉牛生産で排出される温室効果ガスのうち、ふん尿を堆肥化する際に出る成分を、飼料の変更で抑えることに取り組んだ。一般的な飼料である大豆かすを部分的に、アミノ酸を添加したトウモロコシへ変更した特殊飼料を開発した。

 同センターは、特殊飼料を肉牛4頭に与え、堆肥化する期間の約2カ月間で出る温室効果ガスの量を調査。従来の飼料を与えた別の4頭と比べ、ガス排出量が二酸化炭素換算で半分程度となる339キロに削減できることを確かめた。

 これを受け、20年10月~21年3月には同牧場の牛18頭を対象に実証試験を実施。改めて牛の嗜好(しこう)性や肉質に影響がないことを確認した。同牧場はブランド化に向け、同9月ごろから全飼育頭数の15%に当たる約360頭に、特殊飼料を与えてきた。

 こうして育てた牛の食肉販売に当たり、同牧場は直売店に「地球にやさしいお肉」のパネルを置いてPRしている。斎藤順子(さいとうじゅんこ)取締役(50)は「通常の牛肉より割高だが、購入することで地球温暖化対策に貢献できると考えてくれればうれしい」と話す。

 同センターの脇阪浩(わきさかひろし)所長(59)は「温室効果ガス削減への取り組みは始まったばかり。他の畜産農家にも特殊飼料の利用が広がり、業界の持続可能性を高めることにつながれば」と話している。