日光市山内の世界遺産・日光山輪王寺の本堂「三仏堂」前にある国天然記念物「金剛桜」。樹齢約500年と老齢化し、樹勢回復のための取り組みが始まってから今年で25年となった。丹念な手入れや定期観察を欠かさず続けた結果、往年のような花の美しさが戻りつつある。樹勢回復に当初から携わる、宇都宮大名誉教授で環境コンサルティング「総研」(宇都宮市)の技術顧問谷本丈夫(たにもとたけお)さん(81)は「人間と同じで手遅れになると回復は難しい。愛情を持って管理すれば成果が得られることを証明できている」と話す。

今年も満開となった金剛桜

 金剛桜は今年も4月16~27日、見事な咲きぶりを見せた。香りが強く、白色の花とともに黄緑色の葉を付けるのが特徴で、オオシマザクラの影響を受けた交雑種と推定される貴重な古木。満開となった23日は境内を行き交う多くの参拝者が足を止めて見入っていた。

 1881年、神仏分離令で、三仏堂が現在の日光二荒山神社がある場所から移転した際、当時の輪王寺門跡彦坂諶厚(ひこさかじんこう)大僧正がこの桜を境内の別な場所から移植した。彦坂大僧正の贈り名である「金剛心院」にちなみ、金剛桜と呼ばれるようになった。

 1936年に天然記念物となり、老齢化で90年代に花付きの悪さや幹の一部が腐るなどの衰えが表面化した。当時を知る輪王寺の今井昌英(いまいしょうえい)執事長(65)は「枯れてしまうと思うほど弱っていた」と話す。

定期観察を行う谷本さん(右)ら

 樹勢回復のための本格的な取り組みが始まったのは98年。樹木診断を行った上で、土を入れ替える土壌改良などが実施された。土は大量に入れ替えると根を傷める恐れがあるため、3年を費やした。

 続いて枯れ枝の伐採や腐朽の原因となる菌類の除去、肥料散布などを続け、樹勢は年々改善されてきた。25年間関わってきた谷本さんは「処置が良かったことを、金剛桜が自ら示してくれている」と話す。

 4月中旬、年間管理を請け負う総研の谷本さんら関係者が訪れ、根や土壌の状態などの定期観察を実施。現在も年間数センチほど枝が伸びていることを確認した。

 今井執事長は「金剛桜が元気になり、大僧正も喜んでいると思う。三仏堂や相輪橖が修理でよみがえった中、花が荘厳な境内に彩りを添えてくれる」と話した。谷本さんは「継続的な取り組みが大切。環境などで何が最適な方法かは異なるため、治療の記録を残すことが今後のためにも重要」と話している。