肉親を隔離され、当たり前の家族関係を築けなかった。配偶者や子どもというだけで、激しい差別を受けた。元患者である親きょうだいを恨み、その存在を隠し続けた…。ハンセン病元患者の家族の多くは、過酷な人生を送ってきた▼元患者家族による訴訟での熊本地裁判断を経て、国が家族に最高180万円の補償金を支給する法律が、2019年に施行された。日本の植民地だった韓国や台湾で戦前、療養所に隔離された元患者の家族も対象となった▼しかし、厚生労働省が約2万4千人と見込んだ元患者家族のうち、補償金支給が決定したのは4月現在、韓国10人と台湾8人を含め、約7300人にとどまる▼補償が進まない最大の理由は、差別への恐れだろう。手続きにより万が一にも自分がハンセン病家族だと知られることはないか。「人生が壊れるかもしれないのに、180万円というのは、あまりにも少ない金額だ」。家族訴訟弁護団の国宗直子(くにむね・なおこ)弁護士は指摘する▼国は家族訴訟判決を受け入れるに当たり、当時の安倍晋三(あべ・しんぞう)首相が「家族の方々が地域で安心して暮らせる社会を実現していく」と宣言した▼だが、家族訴訟原告団の黄光男(ファン・グァンナム)副団長は「そんな社会になっているか。いつになったらなるのか」と批判する。家族への補償金の請求期限は24年11月。残り時間は少ない。