この時季になるとにぎわうインスタ映えスポットがあると聞いて、栃木市の巴波川にやってきた。川幅いっぱいに広がる1151匹の鯉(こい)のぼり。ゆったりと進む遊覧船からの楽しそうな歌声。今回のお散歩は、船頭さんとおそろいの笠(かさ)をかぶって、船に乗り込み出発だ!

空・水面・水中の「三段鯉」と川沿いの蔵の街

 ■橋の下で和む

 上流に向かってこぎ出し始めてすぐ、船頭さんが立てて操る竿(さお)の長さよりも低い橋が迫って来る。どうやってくぐるんだろう? 船頭さんはスッと竿を寝かせ、橋の下面にあるわずかな溝を手で掴み、満席で重たい船をグイッと前へ押し進めた。「こないだは手首を痛めましたもん」と暗い橋の下で場を和ませ、「ヨイショ!」と息を切らしながら橋をくぐり抜けると、一気に視界が広がった。澄んだ川、空を泳ぐ鯉のぼりたち、両岸には昭和の薫りが漂う風景---すごぉい!

 水門近くに着いた所で、Uターン。水位が浅く座礁することもあるそうだが、ベテラン船頭の藤沼美紀雄(ふじぬまみきお)さん(72)は見事な方向転換を決め、船客から自然と拍手が起きた。下りは川の流れに乗ってスイスイ進み、風が心地いい。再び橋をくぐると、私たちの頭に当たる低さで、鯉のぼりが出迎えてくれた。小さい子供が触って楽しめるように、わざと低く設置してあるのだとか。「1151匹」という数字は、“いい鯉(恋)”と掛けている。

乗船してご機嫌の取材班

 ■力強い船頭唄

 定年退職後に船頭を始め「第二の青春に命をかけて」いる藤沼さんが、“恋”が頭上を泳ぐ船の舳先(へさき)で力強く船頭唄をうたい始めた。それまでの和気あいあいとした雰囲気からガラッと変わり、船客は皆静かに聴き入る。にこにこ話を聞いていたおばあちゃんが、唄を聴くと下を向いて動かなくなり「感動して涙が止まらないんです」とぼろぼろ泣いていたこともあったそう。唄の途中で「ハーアーヨイサーコラショ」と掛け合いがあり、私たちも照れながらも皆と一緒に声を出した。

 約30分がアッと言う間に思える、気持ちよい船旅だった。頭上に泳ぐ鯉のぼり、水面に映る鯉のぼりの影、水中を泳ぐ本物の鯉。この「三段鯉」を楽しめる「うずまの鯉のぼり」は、今月10日まで。ぜひご覧あれ。