東京五輪・パラリンピックのメイン会場として数々のドラマが繰り広げられた国立競技場(東京都新宿区)。この日本スポーツの聖地にも、栃木県産材が随所に施されている。

 3層にも及ぶ頭上の軒びさしに圧倒されながら、地下1階へ向かう。VIPエリアエントランスで出迎えてくれたのは、宇都宮市産の大谷石カウンター。東京五輪の開閉会式では天皇陛下、菅義偉(すがよしひで)前首相、バッハIOC会長が利用したという最重要エリアだ。

VIPエリアの大谷石カウンター。天井の木材や白い壁と相まって、上品な空間の演出に一役買っている

 カウンターは厚さ8センチ、約1メートル四方の石板を6枚並べ、天板を付けた。乳白色のテーブルのようで上質な存在感を放つ。国立競技場事業課の担当者によると、建築関係者から「こんなに大きく切り出した大谷石を見たことがない」と驚かれるという。

 大谷石は、旧国立競技場でもふんだんに使われていた。建て替えに伴い地元組合や市の要望活動が実って採用され、別のVIPエリアにもやや小ぶりなカウンターが設置されている。

 「大谷石は軟らかく、質感が魅力的。今回は通常よりも厚みがあり、大きいサイズで量感を感じられるよう効果的に使った」。設計に関わった隈研吾(くまけんご)建築都市設計事務所の横尾実(よこおみのる)社長は狙いをこう説明してくれた。天板の表面には透明な樹脂をコーティングする工夫も施した。

旧国立競技場のレガシーとして移設された記念作品。塑像6体の台座に芦野石が使用されている

 那須町産の芦野石も印象的に使われている。旧競技場から移設された記念作品の塑像の台座として活用。塑像は周辺に点在しており、横尾社長は「自然環境にマッチングする素材を考えた」。他にも地下水路化した渋谷川をほうふつさせる「せせらぎ」の水景設備、VIPラウンジのトイレ壁面に用いられている。

 緑豊かな明治神宮外苑に位置し、「杜(もり)のスタジアム」がコンセプトでもある。47都道府県から木材を調達し、日本の伝統建築の特徴である軒びさしに使用。本県分は鹿沼市と高原県有林のスギが北東の24メートル区間に配置されている。競技場の外からも眺めることができ、出身県の木材を探すのが「あるある」とか。

柔和で温かい印象を与える外周軒びさし。本県産の木材は北東の一角にある

 今後は各種競技の大会開催が本格化する。新型コロナウイルス対策で東京五輪は無観客に終わった。栃木県産材が多くの来場者の目に留まる日が待ち遠しい。

◆国立競技場 老朽化のため東京五輪に向けて建て替えられ、2019年に完成した。約6万人収容。スタジアムツアーではピッチに立てるほか、展望デッキやロッカールーム、聖火台などを見学できる。ツアー料金は大人1400円、高校生以下800円。