「あの戦争から70年、この国は戦争をしないですんだ。おめえの死は無意味じゃねえって言ってやりたい」。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月余り。戦禍を伝えるニュースに触れる中、思い出すのは7年前、戦後70年の連載で取材した足利市の秋草鶴次(あきくさつるじ)さん(享年90)の言葉だ。

 秋草さんは太平洋戦争で2万人超の日本兵が戦死した硫黄島から生還。多くの犠牲者の上に今の平和があると繰り返した。懸念される記憶の風化に「日本人は火が付いたら進む。次に戦争が起きたら100年後まで平和は来ない」と指摘していた。

 先月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で行った演説。祖国の惨状を淡々と述べたのに対し、山東昭子(さんとうあきこ)参院議長のあいさつは対照的だった。「命をも顧みず、祖国のために戦う姿を拝見し勇気に感動している」。違和感だけが残った。

 為政者がどんな「正義」を掲げようとも犠牲になるのは一般の人々だ。過去の戦争の教訓を忘れず、冷静に思考しなければならない。秋草さんの「警告」が耳元にこだましている。