芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の短編に「南瓜(かぼちゃ)」がある。「何しろ南瓜が人を殺す世の中なんだから、驚くよ」の書き出しにドキッとするが、もちろんカボチャの犯行ではなく、そういうあだ名の男の話▼その見てくれ故の命名だろう。「どてかぼちゃ」に至っては役立たずの意味で使われる侮蔑語である。カボチャにとってはさんざんな言われようだが、野菜としての実力は相当なもの。がんの予防にも効果があるとされるベータカロテンを豊富に含むそうだ▼寒い時期の栄養補給で「冬至にカボチャ」はよく耳にするが、実は旬はちょうど今ごろだ。取れたてのカボチャはホクホクと甘味も強く、煮物や天ぷら、バーベキューの具材にもうってつけだ▼那須烏山市の特産品に「中山かぼちゃ」がある。紡錘形の外見が大きな特徴で、きめ細かな舌触りをはじめ食味も抜群だとか▼JAなす南の岡寿実(おかとしみ)さん(61)によれば、一般のカボチャに比べ手間が掛かり、収量も少なめとあって現在の栽培農家はわずかに11戸。品種改良に取り組むなど産地化の拡大に努めているものの、高齢化など多くの課題を抱えているという▼江戸時代、女性の好むものとして「いも、たこ、南京(カボチャ)」が挙げられた。今の世に性差はナンセンス。男女を問わず中山かぼちゃをよく食べて、産地振興を側面から支援しよう。