雪崩事故を巡る過去の刑事処分

 登山講習会中の大田原高生徒7人と教諭1人が死亡した那須雪崩事故は、発生から5年を経て、民事・刑事の法廷で真相が究明されることになった。5遺族が先月2日、栃木県や講習会の責任者だった3教諭らに損害賠償を求めて宇都宮地裁に民事提訴。8日後には、宇都宮地検が業務上過失致死傷罪で3教諭を在宅起訴した。部活動中に起きた雪崩事故の原因と責任について、司法がどんな判断を下すのか。裁判の行方が注目される。

 民事訴訟の焦点は、教諭個人にも賠償責任が認められるかどうかだ。遺族側は、冬山登山を禁じた国などの通達や前日からの雪崩注意報、事故7年前の講習会でも雪崩事故を経験していたことから、「雪崩を予見できたのに危険な雪上訓練を強行した」としている。

 公務員である教諭個人への賠償請求は、体罰など明らかな故意があった場合に認められうる。遺族側は3教諭の判断が故意と認められるほどの重大な過失による「人災」だったと主張していく方針。第1回口頭弁論は4月27日に予定され、2遺族が意見陳述する。

 3教諭の主張は明らかになっていない。県は県側の責任自体は認める方針とみられる。

 一方、3教諭が起訴された刑事裁判。起訴状は、3教諭が2017年3月27日朝、重大な雪崩発生が容易に予想されたのに、情報収集や安全な訓練区域設定をせず、スキー場周辺で漫然と雪上訓練を行って8人を死亡させたなどとしている。

 地検は、3教諭の登山・指導経験を踏まえ、急斜面の現場、新たな積雪、前日からの雪崩注意報などから、雪崩を予見できたことを立証するとみられる。6遺族が被害者参加制度を利用して公判に加わる。

 山岳事故に詳しい溝手康史(みぞてやすふみ)弁護士(広島弁護士会)は「弁護側は当日の講習計画立案時は雪崩発生が予見できなかったと主張するのでは」と指摘。発生時に現場から離れた場所にいた教諭については「現場の班が雪崩の危険がある場所に行くと思わなかった」と主張することも予想されるという。

 現時点では刑事訴訟の初公判の見通しは立っていない。3教諭が起訴内容を否認する場合、公判開始まで長期化することもありえる。一般的に禁錮刑以上の有罪判決が確定すれば地方公務員は失職となる。

 過去の雪崩事故では起訴された事例自体が多くない。関係者は「今回は雪崩、学校教育中の事故、関係者の多さと特徴が多い。裁判は学校現場に大きな警鐘を鳴らすことになる」と指摘している。