地元をもっと、歩こう。地元の新聞に、それを書こう。---そんなゼミを私が白鴎大で新設したのは、昨年春のこと。ぽつりぽつりと、10人の3年生(なぜか全員女子)が集まった。

 「市役所に就職して、町おこしをしたいんです」「うちの町の公認ゆるキャラ、私が命名者なんです」「近所のスーパー、とてもいいおばさんがいるのに、友達が誰も知らなくて残念なんです」---おお、ただ発揮する場がなかっただけで、若者たちにも地元愛はちゃんと種火のようにくすぶっていたのだ!

下村教授(左)と、連載初回に「白鴎大発祥の地発見」をスクープした助っ人の4年生コンビ

■難問に挑む

 そもそもなぜ、私はこのゼミを始めようと思ったのか。その根底には、二つの問題意識があった。

 【問1】地方再生の鍵は、建物ではなく「人」。どんなに立派な施設を作ってみても、次世代が街を離れてしまっては、再生などありえない。若者が地元に魅力や愛着や誇りを抱くには、どうすれば良いのか?

 【問2】新聞購読者の急減で、特に地方紙がピンチ。例外的に強い下野新聞でも、若者の離れ方は軽視できない。この状況に歯止めをかけ、地域メディアの存在価値を次世代が見直すには、どうすれば良いのか?

 ---この二つの難問に同時に挑む試みとして、ほんの小さな一歩だが「県南いいね散歩」は始まった。

 もっと地元に興味を持てとただ言われても、若者たちには響かない。ならば、同年代の素人記者が学生目線で正直に感じたままを書く方が、敷居は下がるのではないか。さらに、若者たちが愛用するインスタグラムでも同時に発信したら、新聞への新たな誘導路ができるのではないか。

ゼミの時間は、班ごとに作戦会議

■確実に変化

 連載スタートから半年、まずは散歩している10人のゼミ生たち自身が、確実に感じ始めている。この町、意外と面白いヒトやコトやスポットがあるぞ。新聞に記事を書くのって、SNSの発信とはどうも重みが違うぞ。見ず知らずの地元の人から反応をもらうと、なんだか妙にうれしいぞ。

 書き手の中に芽生えて来たこの変化が、次に読み手へ、そして地域へと、どんな気付きを広げてゆくか。ゼミの実験は、まだ始まったばかりだ。