私は「人生」について、幼少期よりデジタルゲームからたくさんのことを学びました。

 「ドラゴンクエスト」で遊んでいるとき。新しい土地にたどり着くと、現れるモンスターが強くて苦労する。それでも頑張って戦っていると、自分のレベルが上がり新しい技を覚えて、楽にそして華やかに勝てるようになる。

 しかし、その土地にとどまってその栄華に浸っていても、良い経験ができず自分は向上しないし、物語も先に進まない。仕方なく次の新しい土地に進むと、また新しく強いモンスターに苦労させられる。この繰り返しなのだなと。

 これは「人生」も同じではないか。与えられた苦境を乗り越えて成長したら、今の自分によりふさわしい場所に導かれる。だから、向上には継続的な挑戦が必要である。

宇都宮市内にある家電量販店のゲーム売り場。栗原さんは幼少期、ゲームから多くのことを学んだという

 一方、繰り返される向上のループの中で、燃え尽きないように時折、自分を見つめ直さないといけない。今、自分ができるようになっていることをかみ締めよう。この思想はのちの受験勉強の時に、私を支えてくれました。

 別の例です。私が幼少の頃の部活動は、楽しく適度に運動に関わることを認めませんでした。「軽音楽部」のように「軽運動部」があればいいのに、という話題が昨年ネットで少し話題になったところを見ると、今でもそういう傾向はあるように思います。

 私は、運動にストイックさが求められる環境になじめず、くすぶっていました。しかし格闘ゲームにのめり込んでいくうちに、ゲーム内でよく行っている戦いの駆け引きを体育の柔道試合で応用してみたら、快勝できたことがありました。格闘技というのは格闘ゲームと似ているんだな、と不思議な感動をして結局、大学生以降は武道をたしなむようになりました。

 巡り巡って私は今、ゲームの力を実社会の課題に応用しようとする「ゲーミフィケーション」という分野の研究を行っています。

 ゲームは人をひきつけ熱中させる技巧を洗練させてきた、学びや行動変容に関する人類の英知の一つだと思います。ポケットモンスターをゲットするために外出する習慣を得た方は、その力を実感しているのではないでしょうか。

 最近では、ゲーム内での活動に経済的見返りがあり、生計の足しにできる「play to earn」という仕組みの普及も進んでいます。ゲームは時間の無駄と批判されて久しいですが、われわれの意識も徐々に変わっていくことでしょう。

 皆さん、楽しく学んで行動し、人生を豊かにしましょう。

(栗原一貴(くりはらかずたか)・津田塾大教授)

(終わり)