無言の通報者を発見し救助した消防隊と救急隊。前列右は安納消防隊長=2月28日午後、宇都宮市中央消防署

男性が倒れていた宇都宮市内の河川(同市中央消防署提供)

無言の通報者を発見し救助した消防隊と救急隊。前列右は安納消防隊長=2月28日午後、宇都宮市中央消防署 男性が倒れていた宇都宮市内の河川(同市中央消防署提供)

 手掛かりは、電話越しにかすかに聞こえる「水の音」だった-。宇都宮市中央消防署は、119番したものの呼び掛けに応答できず、川の中で倒れていた市内の高齢男性を捜し当て救出したとして、同署の消防隊と救急隊計8人を4日、表彰する。通報者の安否も場所も分からない特異な事案だったが、隊員の推理が的中し、男性の命を救った。

 1月4日午前5時13分、市消防局に携帯電話から119番が入った。だが終始無言のまま。火事か救急か電話の故障なのか、分からなかった。

 着信番号を基に携帯所有者の自宅を特定し、消防隊5人と救急隊3人が向かった。家の中には誰もいない。救急隊員が携帯電話にかけ直した。通話状態になったが、やはり呼び掛けには応じない。衛星利用測位システム(GPS)による発信地測定で半径400メートル以内にいることは分かった。

 隊員は受話口の向こうに耳を澄ませた。サー、サー…。水が流れるような音がした。「水だよね」。周辺に水が流れる場所はないか。消防車のカーナビで調べると、近くに河川があり、手分けして捜した。

 辺りはまだ暗く、気温は氷点下3度。ヘルメットにライトを付けた消防隊員が向かった橋の下から、携帯電話の着信音が聞こえた。のぞき込むと、川の中に男性が横たわっていた。水深約20センチ。携帯電話は水に漬からないよう、体の上で握りしめていたという。

 道路と川の高低差は約3メートル。隊員3人が川に入り、はしごを立て掛け、男性を背負って上り、地上の隊員へ引き渡した。通報から30分足らずだった。

 安納真樹(あんのうまさき)消防隊長(56)は「隊員に背負われた男性が声を出した時、生きていると分かり、うれしかった」と振り返る。「場所の断定は要救助者の命を助ける鍵。われわれはその鍵をいち早く開けて助けたい」

 男性は頭にけがをし、体温は30.5度まで下がっていた。川に柵はなく、誤って転落した可能性がある。病院搬送後に入院し、回復に向かっているという。

 高齢者を捜し当て救出した同署職員は次の通り。

 消防隊 安納真樹(あんのうまさき)消防司令(56)佐藤岳明(さとうたけあき)消防司令補(53)浜崎功至(はまざきかつし)消防士長(46)大槻優介(おおつきゆうすけ)消防士長(30)戸泉貴陽(といずみたかあき)消防士(23)

 救急隊 石戸谷健進(いしとやけんしん)消防司令補(48)深谷悠太(ふかやゆうた)消防士長(34)谷延有紗(たにのぶありさ)消防士長(32)