利用者の男性から体調を聞き取り、手元の端末にメモする室井さん(右)=2月下旬、宇都宮市内

 新型コロナウイルスの自宅療養者への訪問介護で、手当の在り方を巡り関係者から疑問の声が上がっている。入浴や排せつの介助など感染リスクの高い業務を担う一方、医師や看護師が感染者を訪問した際には支給される加算手当が介護分野には無いからだ。訪問介護関係者が適切な報酬を求めるオンライン署名を始めると、1カ月ほどで約4万人分が集まった。関係者は「自宅療養を支える担い手の1人として待遇を改善してほしい」と訴える。

 「めまいは続いていますか」

 2月下旬、宇都宮市内の住宅で、介護福祉士室井亜希乃(むろいあきの)さん(33)が住民の男性(75)の健康確認を行っていた。同市宝木町2丁目の「介護サービスセンター虹」から訪問介護で訪れ、マスクやゴーグル、使い捨てエプロンを身に着けて部屋を掃除した室井さん。ゴーグルはくもり、額から汗が流れる。自身と利用者を感染から守るために防護は厳重にせざるを得ない。

 管理者の金田千恵(かねだちえ)さん(51)によると、同センターは1月以降、オミクロン株の流行で休業する介護施設の増加に伴い、新規の訪問依頼が増えた。自宅療養中のコロナ患者と同居する利用者の訪問も行った。本人は濃厚接触者とされたが、感染していると仮定して対策しながら、排せつや食事の介助を実施したという。

 金田さんは「感染リスクの高い業務は多く、職員の疲労は激しい」と指摘。「感染者のケアをしても訪問介護だけ手当が無いのは、不平等だと思ってしまう」と明かす。

 訪問介護施設の代表者らが1月末から始めた、手当創設を求めるオンライン署名は、3週間ほどで約3万6千人分が集まった。2月17日に厚生労働省へ提出した後も継続し、数は4万人に迫っている。

 呼び掛け人の1人で、東京都内の訪問介護事業所を営む吉田真一(よしだしんいち)さん(48)は「感染リスクという点では医療も介護も変わらない。なぜ訪問介護にだけ手当が出ないのか」と憤る。

 介護側のみ報酬が出ない現状は、介護職のなり手不足に拍車を掛けるとも危惧する。「介護の仕事を正当に評価してほしい。このままでは、在宅介護が成り立たなくなる」と訴えた。