「絆」。東日本大震災後、よく使われるようになった漢字の一つだろう。つながりや結びつきを指す「きずな」が一般的な読み方だが、「ほだし」と読めば足かせ、束縛といったネガティブな意味合いを帯びるから興味深い▼つながることが面倒だという風潮も、確かにある。ただ、「つながり続ければお互いさまという気持ちになり、信頼関係が生まれる。そんな社会が醸成されれば健康的な行動が取れます」。先日、獨協医大であった「日本社会医学会総会」で、こんな見解が示された▼発言者である泌尿器科医の岩室紳也(いわむろしんや)さんは、メタボ体形を半年で克服した経験を持つ。原動力となったのは医師の知識でなく、悪態をつきながらも温かく支えてくれた、周囲とのつながりだったという▼まだなじみは薄いが、社会医学は生活環境と健康との関係を研究する分野である。生活習慣や心の問題など、社会が多様化するにつれ研究テーマは多岐にわたる▼シンポジウムではコミュニケーションの手段にも焦点が当たり、多くの参加者がじかに話すことの重要性を強調した。友人や家族と会話している高齢者ほど要介護になるリスクが低い、という研究の結果も報告された▼家庭の決まり事に地域の伝統と、「ほだし」のない世の中はない。だからこそ、「きずな」がいっそう輝きを増す。