仏壇の前で息子の高瀬淳生さんに起訴を報告する母親の晶子さん=10日午後、矢板市

 「8人の無念さを晴らすためのハードルを一つ乗り越えた」。那須雪崩事故で宇都宮地検は10日、引率教諭3人を在宅起訴した。事故発生から来月で5年。事故原因の真相解明や厳重な処分を望み続けてきた遺族は、一様に安堵(あんど)の声を上げた。今後の公判を見据え、「ここからがスタート」と冷静に受け止める遺族もいた。

 起訴の報を受け、事故で亡くなった大田原高山岳部第3顧問毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん=当時(29)=の父辰幸(たつゆき)さん(69)は「起訴されない不安が頭をよぎることもあった。正直ホッとした」と明かした。

 一部の遺族は定期的に地検幹部と面会し、厳重処分を訴え続けてきた。

 佐藤宏祐(さとうこうすけ)さん=当時(16)=の父政充(まさみつ)さん(52)も「何の因果か、今日も事故当時と同じような雪。やっとこの日が来た」と胸をなで下ろした。

 「ここからがスタート」と話すのは鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん=当時(17)の父浩之(ひろゆき)さん(56)。真相解明と教諭3人の真摯(しんし)な反省を期待する。「これまでとは違う主張も出てくると思うが、しっかり見守りたい」

 裁判では、遺族が被告に質問できる被害者参加制度の利用も可能となる見通しだ。高瀬淳生(たかせあつき)さん=当時(16)=の母晶子(あきこ)さん(55)は「もちろん希望したい」と迷いはない。

 県などを相手に遺族が申し立てた民事調停に3教諭が出席せず、不成立に終わった。なぜ事故後に携帯電話で通報しなかったか、遺族宅の弔問をやめた理由は-。「(3教諭に)直接聞きたいことはあまりに多すぎる。全てを認め、事故と向き合ってほしい」

 奥公輝(おくまさき)さん=当時(16)=の父勝(まさる)さん(50)は「(失職となる)禁錮刑以上の判決を得るまで安心はできないが、安全確認を怠ったまま部活動を実施することは『犯罪行為』であると言ってもらえた」と受け止めた。

 今回の事故は「人災」だと改めて強調した上で、「全国の教員の学校安全に対する意識が変わることを期待したい」と訴えた。

 3教諭らの責任を問う民事訴訟で遺族側代理人を務める石田弘太郎(いしだこうたろう)弁護士(41)は「責任論としては民事と刑事でつながるところがある。公開の法廷でさまざまなことが明らかになってほしい」と期待した。