言葉は多く交わさなくても、互いを認め合うアスリートの親子がいる。宇都宮市出身でスピードスケート成年男子の宇賀神怜真(うがじんれいま)選手(22)=大東大4年=と現役競輪選手の父・浩幸(ひろゆき)さん(47)だ。宇賀神選手は27日の2000メートルリレーで決勝進出に貢献。県スケート連盟の一員として地元国体を裏方で支える父の目の前で、頼もしい姿を見せた。
小学4年からスケートを始めた宇賀神選手だが、夢は父と同じ「競輪選手になること」だった。作新学院高では自転車競技に軸足を置き、3年生時には全国高校総体準優勝。それでも大学ではスケート一本に絞った。「きっかけをつかめば一気にタイムが伸びる」。二足のわらじの競技生活の中、氷上に乗るたびにつかむ手応えに魅了されていた。迷いは、なかった。
そんな息子に浩幸さんは何も言わなかった。「どちらに進んでも苦しい道。それなら楽しい方が良い」。長年、自身のレースの合間にスケートの大会運営を手伝い、氷上で奮闘する姿も見てきた。「当初はタイムが伸びず中学までに(スケートを)辞めると思っていた。本当に努力してきた」
この日のリレー予選4組。2走の宇賀神選手は堅実な滑りで仲間にバトンをつないだ。リンク中央で運営補助をしていた浩幸さんも、このときばかりは落ち着かない様子。無事に1位で決勝進出を決め、「アイツなりに頑張ったのでは」。短い言葉に安堵(あんど)とねぎらいの思いを込めた。
「40歳をすぎてもトップレベルで戦っている。本当にすごいこと」。父から刺激を受けているという宇賀神選手。「まだ伸び代を感じる」と大学卒業後もスケートを続ける意向だ。
戦う舞台は違うが、挑み続けるアスリートとしての道は同じ。2人の物語は、これからも続いていく。