「農山村には何もない」「都市にあこがれ村を捨ててきた」。過疎化が進む日本中の中山間地域に暮らす、あるいは暮らしてきた人々の大方が、こんな考えを持っているのではないか▼NPO法人中山間地域フォーラムが都内で開いたシンポジウム「農山村の教育力」で、パネリストの一人がこう切り出した。導き出した結論が「農山村には可能性がある。人を育てる力がある」。その鍵は大自然と人情だ▼長野県泰阜(やすおか)村。人口約1600人の過疎の山村である。ここを拠点とするNPO法人「グリーンウッド自然体験教育センター」は、全国から集まった小中学生が1年間、共に生活する「暮らしの学校」や年間1200人が参加する「山賊キャンプ」を主催する▼代表の辻英之(つじひでゆき)さんによれば、最初は村人からえたいの知れない団体と警戒されてきたという。「村の論理をとにかく大事にしてきた」結果、今では村の経済にとっても欠かせない存在に育った▼内閣府の調査で「子育てに適しているのは」との問いに男女を問わず、都市よりも農山漁村が多数派を占めた。田園回帰は確実に進んでいる▼本県には法律に基づく中山間地域が12市町もある。多くの耕作放棄地を抱え、活性化に向け難題を突きつけられている。教育力に焦点を当て何とか動き出せないか。シンポを聞いて思案した。