酷暑、炎暑、熱暑、激暑…。記録破りの暑さが続くこの夏は、何と表現したらしっくりくるのだろう。心の底から、処暑が待ち遠しい▼熱中症対策にはエアコン、水分、塩分などが欠かせないのは知れ渡っているが、さて、心の涼感対策には何がうってつけか。怪談話に釣忍、風鈴、花火も有力な候補に挙がりそうだ▼一つ忘れてならないものに金魚がある。当時は栃木県に属していた邑楽(おうら)郡館林町(群馬県館林市)出身の文豪、田山花袋(たやまかたい)は「金魚」と名付けた短編を残している▼「夏の中(うち)は、そこに金魚が泳いでいるのが何(ど)んなに美しかったでしょう」。家の小さな池に飼っていた金魚が冬を越せるのか、幼い女の子が心を痛める日常を描いた珠玉の作品である▼この金魚がどんな品種だったかは推測するしかないが、時代と丈夫さを考慮すれば恐らく「和金」だろう。佐野市にある金魚卸大手の「佐野観賞魚」によれば、今の流行は「ピンポンパール」「水泡」「頂天眼」だそう。共通するのは丸っこくてかわいい、という点である▼金魚もこの猛暑にはお手上げだとか。上手に飼う秘訣(ひけつ)は、水を交換する際は半分程度にし、きれいにし過ぎないこと。「環境の激変がストレスになるんです」と同社の高橋俊(たかはししゅん)さん(53)は言う。人も金魚も「清濁あわせのむ」くらいがちょうどいいらしい。