ここ1年ほどゲノム編集技術を用いた食品が相次いで登場している。血圧を下げる成分を多く含むトマトや可食部が1・2~1・6倍に増えた肉厚のマダイ、通常の倍近い早さで出荷できるトラフグである▼先ごろ県庁で「とちぎ食品安全セミナー」が開かれ、ゲノム編集食品などの安全性審査について、内閣府食品安全委員会事務局の藤田佳代(ふじたかよ)さんが講演した▼ゲノム編集とは、生物の持つDNAの中の狙った部分を切断する技術を指す。特定の場所を切ると、突然変異と同じ現象が起きる。新品種ができるまで時間がかかる従来育種と違い、1年から数年に短縮できるのがメリットとなる▼現段階で、国は届け出のみで販売と流通を認めている。表示の義務化は行っておらず、安全のお墨付きを与えていると言っていい▼世界人口の増加などで近い将来、需要が供給を上回りタンパク質が不足する危機の到来を予測する声がある。食料増産に向けゲノム編集食品には期待が集まり、ゲノム編集の新たな手法を開発した研究者2人には一昨年、ノーベル化学賞が与えられた▼藤田さんは「従来育種の突然変異のスピードを速めているだけ」と説明するが、よく分からないものに対して怖いと感じるのは人間の本能だろう。消費者の理解をどれだけ深められるかが浸透の鍵を握っている。