動脈硬化で動脈血栓症が起きる過程

新保昌久教授

動脈硬化で動脈血栓症が起きる過程 新保昌久教授

 冬は寒さで血圧が急激に上昇しやすく、血管の病気が起こりやすい時季。朝晩の冷え込みが厳しく、高断熱住宅の普及率が低い栃木県は、血栓症の脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすく、注意が必要だ。自治医大循環器内科学部門の新保昌久(しんぽまさひさ)教授に血栓症やその予防策などについて聞いた。

 新保教授によると、血栓とは固まった血の塊で、大きくなると血管内部を詰まらせるという。そして、正常に血が届かなくなった部位や臓器が壊死(えし)したり、機能を失ったりして起きる疾患を血栓症と呼ぶ。

 血栓症は、動脈に血栓ができる動脈血栓症と静脈に血栓ができる静脈血栓症に分かれる。動脈血栓症で代表的なのが脳梗塞や心筋梗塞、静脈血栓症でよく知られているのがエコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症)だ。

 2015年の厚労省「都道府県別に見た死亡の状況調査」の人口10万人当たりの脳梗塞の死亡率は、栃木県の女性がワースト3位、男性がワースト8位、急性心筋梗塞も女性がワースト8位。血栓症対策は栃木県の長年の課題となっている。

 動脈血栓症の原因となるのが動脈硬化。動脈硬化が進むと、動脈の壁が硬くなったり厚くなったりして、脂肪などが血管内部に蓄積されてプラークが形成されていく。何らかのきっかけでプラークが破れると、その傷を治そうと血液の凝固作用が働いて血栓ができ、血管の内部を詰まらせて、動脈血栓症を引き起こす。

 動脈硬化を発症する危険因子として(1)喫煙(2)高血圧(3)糖尿病(4)肥満(5)脂質異常症(6)遺伝的要因-が挙げられ、その中でも冬場に気を付けたいのが血圧。暖かい所から寒い所に移動すると血圧は急激に上昇し、血栓症を引き起こしやすくなる。また、寒さで上昇した血圧が入浴などで体が温まると急激に下がる「ヒートショック」も血栓症の引き金になるという。

 新保教授は「寒さの割に高断熱住宅の普及率が低いのが栃木県の特徴。室内温度が低いことに加えてリビング、トイレの室温差が大きく、ヒートショックが起きやすく、血栓ができやすい環境がある」と指摘する。高齢者ほど加齢による動脈硬化が進んでおり、血圧の乱高下は血栓症のきっかけになる。脱衣所やトイレなど寒い場所もヒーターで暖かくし、室温差を小さくする工夫をしたい。

 さらに動脈硬化を予防するため、新保教授は「生活習慣を見直し、危険因子を減らすように努めてほしい」と呼び掛ける。女性は女性ホルモンのエストロゲンの影響でリスクは低いが、閉経後は男性と同等のリスクになるので注意したい。

 動脈硬化になっていないか定期的にチェックすることも重要。脈波伝播(でんぱ)速度の検査(血管年齢)や頸(けい)動脈エコーで分かるという。人間ドックのオプションでも受けられるので、気になる人は受けてみよう。

 静脈血栓症は、長時間同じ姿勢で動かなかったり、脱水状態になったりすると血流が悪くなり血液がドロドロになって発症する。冬はじっとして動かないことが多く、積極的に水分をとらなくなるため知らないうちに脱水状態になり、血栓症を引き起こしやすくなる。新保教授は「じっと座ったままでいることを避け、足を動かし、こまめに水分補給をしてほしい」と話している。