11月の米の引き渡しの際に集まった多くの棚田オーナーら

新緑の中、薫風に吹かれて入郷石畑の棚田で田植えするオーナー(2021年5月)

新緑の中、薫風に吹かれて入郷石畑の棚田で田植えするオーナー(2018年5月)

秋の装いの入郷石畑の棚田。オーナー制度とともに20年間、この景観は守られてきた

11月の米の引き渡しの際に集まった多くの棚田オーナーら 新緑の中、薫風に吹かれて入郷石畑の棚田で田植えするオーナー(2021年5月) 新緑の中、薫風に吹かれて入郷石畑の棚田で田植えするオーナー(2018年5月) 秋の装いの入郷石畑の棚田。オーナー制度とともに20年間、この景観は守られてきた

 八溝の中山間地域に位置する茂木町。里山に広がる棚田は町の自然環境や人の営みを特徴付ける景観の一つだ。しかし過疎、高齢化が進み、耕作されない棚田も増えている。その一方、町では「オーナー制度」による棚田保全の取り組みが県内で最も盛んに行われている。制度を運営する地元住民と県内外から集まるオーナーの思いから、棚田の今を探ってみた。

 「里山を守っているという感覚。それがあって続けているんです」。棚田オーナーの宇都宮市大和1丁目、会社員小林敏也(こばやしとしや)さん(58)は言葉に力を込めた。

 小林さんがオーナーとして活動する「入郷石畑(いりごういしばたけ)の棚田」は、日本の棚田百選の一つ。オーナー制度を行う町内3カ所のうち最も取り組みが早かった。20周年を迎えた今年は、県内と県外でほぼ半々の57組のオーナーがいる。

 年会費は1組3万円。あぜを作る「くろかけ」に始まり、草刈り、田植え、草取り、稲刈りなど作業は年間9回。その間、水回りや防除などの管理は地元が担う。10回目の11月7日は今年作付けた「とちぎの星」の玄米がオーナーに45キロずつ引き渡された日。普段は静かな山あいの道が、米や野菜を運ぶ家族連れや夫婦ら100人であふれた。

 「毎回車で3時間半近くかけて来る」という埼玉県の夫婦は「大変とは思わない。来るたびに、都会で感じられない季節の移り変わりがすごくよく分かる」と、お金に換えられない価値を感じている様子だ。最近は「食育」を主な目的にするオーナーも増えた。

 制度は会員11戸による「入郷棚田保全協議会」の16人が支える。町の補助などを受けず、自立した運営ができている。今、この棚田で耕作する農家は、同会事務局長の塩沢康治(しおざわやすはる)さん(55)を含め、3軒で70アール弱。オーナー制度では棚田20枚の計約80アールを耕作しており、制度導入以降、休耕田が15アールほど復田できたという。

 塩沢さんは「オーナー制度がなかったら荒廃が進んでいた」ときっぱり。「効率や採算を考えたら棚田で米は作れない。オーナーはお客さんではなく棚田保全の仲間」と胸を張った。