疲れた頭をほぐすのに、テンポがよくて痛快な池井戸潤(いけいどじゅん)さんの小説はうってつけだ。銀行マンが主役で代表作の半沢直樹(はんざわなおき)シリーズはもちろん完読した▼当然テレビドラマ化され、2013年版「半沢直樹」は最終回の視聴率が42.2%を記録した。脚本を書いたのが栃木市出身の八津弘幸(やつひろゆき)さん(50)。県公共図書館協会などに招かれ、自らを語った▼流行語にもなった「やられたらやり返す。倍返しだ!」は、原作にはほとんど出てこない。「小説は1冊の中で大きなうねりがあればいいが、連ドラはそうはいかない。1話1話、山を作らないと」。考えついたのが、この決めぜりふ▼加えて、お堅い印象の銀行が舞台の話をどうやって娯楽作品に変えるか。かなり試行錯誤したと打ち明ける。昨年のNHKの朝ドラ「おちょやん」も担当した。心身共につらかったという▼そんな話をしながらも笑いが絶えない八津さんからは、仕事の楽しさ、面白さが前面ににじみ出る。「一流の脚本家は一流のペテン師。いかにお客さんをだますか、楽しんでもらうかばかり考えてると、こうなっちゃうんです。はははっ」▼新型コロナウイルスの感染が下火になったとはいえ、まだまだ気の抜けない日々が続く。そんな閉塞(へいそく)感を打破する八津さんの作品は、本人のとびきりの明るさから生まれている。