無投票で当選し、支持者に報告する川俣氏(左)と福島氏(右)、入野氏

 10~11月に那須烏山、那珂川、市貝の3市町で行われた首長選は、いずれも無投票で現職が当選した。選挙戦で市政・町政を巡る論戦が行われず、選挙や政治に関する有権者の関心や「熱」の低下も指摘されている。識者は「地方自治が機能不全に陥る状況もあり得る」と、首長選の無投票傾向に警鐘を鳴らしている。

 「不戦勝となり大変複雑な思い。燃焼しきれず選挙を終え、喜びは少ない」

 11月2日午後5時過ぎ、市貝町長選で4選を果たした入野正明(いりのまさあき)氏の選挙事務所。入野氏は約10分間のあいさつの多くを割き「無投票は遺憾」と振り返った。

 那須烏山市は現職が再選し、那珂川町は3選。続く市貝町でも有権者は投票の権利を行使できず、現職を「信任」する形となった。

 地域の課題を考える機会となる身近な首長選が行われないことで、市政・町政に対する住民の関心の希薄化や、行政運営の「緩み」を懸念する声もある。

 那須烏山市議の一人は「無投票は市の将来にとって不幸。どんな町にしたいか、現職の主義主張も市民に伝わらない」、那珂川町のベテラン町議も「期数を重ねた上、無投票となれば、立場にあぐらをかくことになりかねない」と話す。

 10月31日投開票の衆院選期間と重なったたため、首長選を巡って支持層が割れることを避けたかった政党関係者の思惑も背景に見え隠れする。ただ、共通の課題として指摘されるのは、地方自治のリーダーを目指す意欲ある人材の不足だ。

 市貝町では、政党の推薦を受けない現職に対し、自民党系町議らが前回選挙に続き対抗馬の擁立に失敗した。ベテラン町議は「町長になりたいという人がいない」とため息をつく。

 那須烏山市は、新市庁舎整備など争点になり得る課題があり、市議会では論戦もあったが、対抗馬は現れなかった。ある市議は「人を押しのけてでも課題や市の将来を何とかしたいという精神的な素地がなくなっている」と分析した。

 那珂川町議の一人は「近年は選挙が必要という声は少ない。町を変えていこうという情熱を持った人が現れなくなった」と語る。

 宇都宮大地域デザイン科学部の中村祐司(なかむらゆうじ)教授は、無投票の弊害について「首長の行政に向き合う緊張感をなくす可能性があり、行政を巡る決断や判断で視野を狭めてしまう恐れがある」と指摘。「首長は政策の立案・決定・実施に強力な権限を持つ権力機構のトップ。議会側の諦めによってチェック・アンド・バランス(均衡と抑制)が発揮されなくなれば、ひいては地方自治が機能不全に陥る状況も考えられる」と危機感を示した。