今年6月下旬、日光市の墨彩画家、矢島想月(やじまそうげつ)さんが亡くなった。享年79歳。近年は体を壊し、寡作だった。

 2012~13年、日光の名所を紹介した連載企画「日光彩(さい)発見」の作画を担当してもらった。カッパや地蔵などを描いた独特のタッチで、郷愁を誘った。絵に添えた記事では、想月さんのありのままの姿も紹介した。酒好き、女性好き。仕事は大嫌い。当人は「こんな人間でも生きている。苦しんでいる人の励みになるのではないか」と笑っていた。

 高校教諭だった想月さん。35歳で職を辞し、勝手気ままな放浪の旅に出た。「人の優しさに助けられ、生きてきたんだ。愛を知ったんだ」。この7年間の経験が、作品の深みにつながったのではないか。

 常日頃から「下手に描きたい」と心から願い、幼児の絵を「最高の手本」と信じていた。「うまく描こう」といった「作為」の排除を目指した。

 もう会えないのか。寂しくもあるが、連載をまとめた本を開けば、いつでも作品群に会える。猫背で酒をすする姿が、浮かんでくる。