宮下さんが日頃使うインスリンと血糖測定器。宮下さんは「患者の悩み事に寄り添った会になってほしい」と願う=4日午後、宇都宮市内

 血糖値を下げるインスリンを体内でつくれない「1型糖尿病」の全県的な患者会「とちぎヤングの会」が10月、栃木県内の医師らによって立ち上がった。「ヤング」は高校生以上で成人を含む年代を指すという。ヤングの患者やその家族の支え合いの場になるとともに、病気や治療の知識などの情報を行き渡らせることが期待されている。年度内にも会員の募集を始め、来春にはウェブ講演会を開く予定だ。

 1型糖尿病は小児期に発症することが多く、県内では、小児患者向けの催しなどが行われてきた。一方、大人では有志レベルの患者の交流はあっても、支援は手薄だったという。

 そこで現在約300人の患者が通う獨協医大病院で糖尿病センター長を務める薄井勲(うすいいさお)教授(56)ら県内の医師6人が発起人となって会を発足。薄井教授は「患者にとって経験を話し合える仲間の存在が病気に立ち向かう力になる」と語る。

 会は年度内にも県内の医療機関を通じて患者や家族を対象に参加を募る。その後は糖尿病専門医らのサポートの下、患者自身による運営へと移行していく方針だ。活動は交流会や講演会などが想定される。

 2歳の時に発症し、1日複数回インスリンの自己注射を行う大田原市浅香2丁目、自営業宮下俊一(みやしたしゅんいち)さん(43)は有志の患者会で仲間と治療にまつわる悩み事を相談し合う。

 宮下さんはこれまで、患者らが病気や注射に対する社会の偏見から病気を打ち明けられず、適切な治療をできないまま合併症を起こす姿を見聞きしてきた。

 就職、結婚、妊娠などライフステージによって患者の抱える悩みは異なる。宮下さんは「個々人の悩みに寄り添う会になってほしい」と望んでいる。

 全国的にも医療機関の垣根を越えた連携は珍しい。患者や家族を支援するNPO法人「日本IDDMネットワーク」の大村詠一(おおむらえいいち)専務理事は「県内どこにいても同じレベルの情報にアクセスできる。全国でも新しい取り組みだ」と期待を寄せた。

 【1型糖尿病】すい臓のインスリンを分泌する細胞が何らかの原因で破壊されることで発症する。生活習慣が要因の2型糖尿病とは異なる。患者は不足したインスリンを自己注射で補いながら生活する必要がある。小児期を中心に発症し、近年の患者数は全国で10~14万人と推定されている。