五輪王者の証しは、思っていた以上に大きく、まぶしかった。縁が欠けたとの紹介に、まさかかみつき…、とよぎったが、持ち運びしているうちに傷ついてしまったとのことだ▼メダルを披露してくれたのは、東京五輪柔道男子60キロ級金メダリストで下野市出身の高藤直寿(たかとうなおひさ)さん。講師として登壇した今月のしもつけ21フォーラムでの一幕である▼高藤さんといえば、変幻自在な動きから投げて勝ちきるイメージが強かった。当人も「持ったら投げる。持てなくても投げる」と、以前を振り返った。だが東京五輪で目立ったのは、したたかな試合運びだった▼この点には「リスクをなるべく取らないようにしている」とした上で、「投げないとつまらないが、嫌なことを続けるのも大切」と解説した。過去の敗戦も糧になっているのだろう。輝くメダルは新境地のたまものだった▼印象的だったのは、小山市出身でロンドン、リオ五輪銅メダリストの海老沼匡(えびぬままさし)さんへの憧れだ。小学時代の柔道クラブ、現在の所属先(パーク24)を決めたのは、同郷の先輩の存在があってこそ。「先輩の分も金メダルを」の思いも強かった▼「子どもたちがやらなくなっている」と柔道界の現況を憂う。今は高藤さんが憧れられる立場にある。その姿を見て柔道を始め、世界に羽ばたく後進の出現に期待したい。