著書を手に、コロナ禍で治療に奔走した体験を振り返る倉持さん=4日夜、宇都宮市中島町

 数多くの新型コロナウイルス陽性者を診療してきた宇都宮市の医師倉持仁(くらもちじん)さん(49)が、著書「コロナ戦記」を出版した。日々ツイッターの投稿として積み重ねた、最前線の医療現場で痛感した数々の苦悩を教訓として、皆保険制度や医療政策の在り方を問い直している。「守れる命を失わせない医療、社会の在り方を考えてほしい」と話す。

 倉持さんは「インターパーク倉持呼吸器内科」院長としてメディアで提言してきた。自施設での検査数は9月末までに、行政検査ではない自費検査を含め5万件を超え、発熱外来で2万7562人を診断した。陽性者は1306人。診療所ながら16床の入院施設と1床の集中治療室も整え、258人の入院患者を診た。

 著書では「皆保険制度の崩壊」に最大の問題意識を置く。「行政が必要な検査対象を絞り治療を受けられない」「目の前で死にかけている患者が入院できない」と強調。日本中で自宅療養を強いられ、命を落とす人が続出した現実を重く受け止める。

 「日本中どこでも、誰でも同程度の医療を受けられる皆保険を私は守りたい。対象を選別する外国のような自己責任の医療になりかねない怖さを根底に感じた」と振り返る。コロナの医療政策を「各都道府県の問題」としてしまい、格差を「しょうがない」と暗黙して、感染拡大を許容するかのような政治の姿勢や一部社会の風潮を感じ、憤ってきた。

 倉持さんの経験の特徴は、現場で治療に奔走しながら抱いた疑念や怒りをツイッターでリアルタイムで投稿し続けてきたことにある。著書では投稿を時系列で追い、ウイルスを巡る出来事と「闘い」の経緯をつぶさに振り返っている。

 痛切な短文の記録は、第1~5波で浮かび上がった課題とリンクし、「人命を本気で守ろうとしない政府」「患者放棄政策」など厳しい言葉に帰結する。泉町書房から出版。四六判224ページ。1980円。