衆院選の低投票率を見ていて、不意に「ワインが水に変わった」という、昔聞いた外国の寓話(ぐうわ)が脳裏をよぎった▼お礼として住民が1人1杯分のワインをたるに入れて贈ったが、中には水が満ちていた。こんな内容だったと思う。「自分一人が水を入れても分からないだろう」。そう全員が考えたことによる結末だった▼小選挙区の県内投票率は53・06%(男性53・78%、女性52・36%)で、前回(2017年10月)の51・65%を1・41ポイント上回ったが、戦後3番目の低さだった。2人に1人は投票しない状況に大きな変化はない▼生活にさまざまな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染拡大後、初の本格的な国政選挙だった。31日午前中に足を運んだ小山市内の投票場には列ができていた。移り住んで約20年だが、珍しい光景だった▼20代と思しき男女が「コロナもあったし、投票しなくては」などと雑談する声が聞こえた。4区は最大の激戦区とも言われていた。同市の投票率は前回を約5ポイント上回ったものの、53・83%は正直、期待したほどではなかった▼「自分一人くらい投票しても変わらない」。棄権した人の本音なのか。キリストは水をワインに変える奇跡を起こしたという。一人一人が熟考の一票を投じることにより政治は動く。奇跡でなく「代え難いワイン」とするために。