札幌市営地下鉄の専用席(土橋客員教授提供)

日本福祉のまちづくり学会の学術賞を受賞した宇都宮大の土橋客員教授(右)と、大森教授

札幌市営地下鉄の専用席(土橋客員教授提供) 日本福祉のまちづくり学会の学術賞を受賞した宇都宮大の土橋客員教授(右)と、大森教授

 公共交通機関の「優先席」の名称が「専用席」だと、高齢者や障害者などの対象者がより座りやすい-。宇都宮大と北星学園大(札幌市)の研究グループが地下鉄での利用状況を調べた結果、対象者が座った割合は関東の優先席が19.9%だったのに対し、札幌市営地下鉄の専用席は93.4%だった。研究は心のバリアフリーの向上につながるとして、本年度の日本福祉のまちづくり学会の学術賞に輝いた。

 宇都宮大地域デザイン科学部の土橋喜人(どばしよしと)客員教授(53)を中心に、同学部の大森宣暁(おおもりのぶあき)教授(50)らと共同研究した。土橋客員教授は交通バリアフリーが専門で、出身は札幌市。30歳の時、交通事故に巻き込まれ足に障害がある。鉄道やバスなどで優先席が適切に利用されていないと感じ、調査に乗り出した。

 土橋客員教授によると、札幌市営地下鉄は国内で唯一、優先席を「専用席」と表示している。優先席は1970年代に国内の公共交通機関で高齢者や障害者らを対象に導入が始まった。同地下鉄は市民らの「健常者が優先席を占領している」との指摘を受けて、独自に名称を変更したという。

 調査は2016~17年、同地下鉄3路線と、混雑率が近い関東の地下鉄3路線で行った。対象者が座っているかどうかや人数などを目視で調べた。混雑時には関東で優先席に空席はほぼなかったが、札幌の専用席では5割ほどが空席だった。

 地下鉄利用者へのアンケートも実施。対象者以外が座ってはいけない雰囲気を「感じる」と答えた割合は関東が約4割、札幌は約6割と高かった。

 土橋客員教授は「名称が与える社会的プレッシャーは大きい」と分析。「独自のルールを受け入れる北海道の土壌と、マナーを守る市民性も影響しているのではないか」と指摘する。

 同学会の学術賞は最高賞で、2年に1度全国の論文から選ばれる。土橋客員教授は「本来は専用席や優先席がなくても、障害者らが席に座れる世の中が望ましい」と力を込め、「社会から不平等が無くなることが一番の目的。研究の結果を行動変容のきっかけにしてほしい」と願っている。