日本人2人が上位入賞した先月のショパン国際ピアノ・コンクールは、近年例がないほど盛り上がった。1次予選から本選までライブ配信された動画投稿サイト「ユーチューブ」の映像を、世界中の音楽ファンが固唾(かたず)をのんで見守った▼ダイナミックな演奏で2位に輝いた反田恭平(そりたきょうへい)さんの本選の視聴回数は200万回を超えた。コメント欄には「心をわしづかみにされた」「あなたこそ1位になるべきだ」など、外国語による賛辞があふれた▼新型コロナウイルスの感染拡大でコンサートを開けず、音楽業界は大打撃を受けた。だが家にいる時間が増えた人々が、ネットで音楽に浸る機会が増えたことで、活路を見いだす動きも顕著だ▼反田さん自身、コロナ禍を受け、いち早く有料ライブ配信を実現させている。今コンクールのオンライン配信が、図らずも観客の裾野を広げることにつながったようだ▼誰もが視聴できるなら、審査員とは異なる評価が音楽愛好家の間で生まれるだろう。個性を競う演奏家にとっても、新しい時代の到来かもしれない▼会員制交流サイト(SNS)の時代、「みんなが審査員」には負の側面もある。秋篠宮家の長女眞子さんの結婚を巡り、誰もが評論家になった結果、誹謗(ひぼう)中傷の嵐が広がってしまった。私たちはまだネット社会を手なずけられないでいる。