夫、長男との時間を過ごす青沼さん(左)。「別姓になることで家族の絆が失われるはずがない」と話す=17日、宇都宮市西川田町

 「現状は民主的とはいえない」

 「夫婦別姓確認訴訟」の原告想田和弘(そうだかずひろ)映画監督(51)=足利市出身=は、政府を痛烈に批判する。

 2017年の内閣府世論調査で、選択的夫婦別姓制度に関する法改正に賛成、または容認している人は67%となった。

 想田さんは「半数以上の有権者が別姓に対し肯定的にもかかわらず法改正がなされない」と指摘する。

 米国で別姓のまま結婚した妻柏木規与子(かしわぎきよこ)さんが日本でも婚姻関係にあることの確認を求めた訴訟で東京地裁は4月、「婚姻は有効」と判示した。

 一方で戸籍への記載はかなわず、相続手続きなどで不利益が起こりうる状況は変わっていない。

 社会に多様性を認め合う声が高まっている。「あらゆる社会の構成員の幸福が大事にされる社会を目指し、政治は大きくかじを切るべきだ」と訴える。

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 公明党や野党は制度導入に賛成しており、立憲民主党は「個人の尊厳と両性の本質的平等を実現する」として制度の早期実現を公約で打ち出した。

 一方で自民党は政権公約で、改姓にともなう不利益を「国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消」するとの記述にとどまった。

 有権者にも制度導入に慎重な声がある。

 宇都宮市中央3丁目、無職小池享二(こいけきょうじ)さん(67)は5月、下野新聞読者登壇に「家族は皆同姓にて一体感が生じる」と投稿した。

 2人の娘は結婚し、それぞれ夫の姓に改姓した。小池姓の継ぎ手はいなくなったが「日本の伝統で何の不自然もない」と言い切った。「踏みとどまる」ための議論が必要と感じている。

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 宇都宮市西川田町、公務員青沼美希(あおぬまみき)さん(29)は2017年、石井慎太郎(いしいしんたろう)さん(29)と結婚し、戸籍上「石井」となった。

 青沼さんにとって旧姓は亡くなった母親との絆であり「胸を張って生きるためのアイデンティティー」。

 旧姓の維持のため事実婚になる選択肢もあったが、保険や親権の問題に直面した。免許証など可能な公的書類には全て旧姓を併記する。

 職場では旧姓の使用が認められていない。戸籍上の名前を文書に記す度、複雑な思いに駆られる。「私たちが別姓でいて誰にも迷惑はかけない。なぜ…」

 議論の行く末は有権者一人一人の投票に委ねられている。

 ミニ解説 

 選択的夫婦別姓制度とは希望する夫婦が結婚後もそれぞれの結婚前の姓を使うことを認める制度。現在の民法では婚姻時、夫婦どちらかが一方の姓を選ばなければならない。

 制度を巡り、自民党内でも意見が割れており「旧姓の通称使用拡大」を求める反対意見が根強い。

 婚姻に際し夫婦同姓を強制する国は日本だけとされ、ジェンダー平等の観点でも課題となっている。