体が鉛のように重く、ベッドから起き上がれない。熱は41度近くまで急激に上がった。「やばい。死ぬかも」。恐怖に駆られた。
宇都宮市、会社員女性(21)を異変が襲ったのは7月中旬。勤務先の飲食店で寒けとのどの痛みを感じ、早めに帰宅した。感染対策は徹底していた自負があった。
しかし翌日。体調が急に悪化した。PCR検査の結果は、新型コロナウイルスの「陽性」。何を食べても味がせず、「まるでゴムのよう」。肺機能は「50代」にまで低下した。「店が特定され、風評被害が出たら…」。心身がすり減った。
約1週間入院し、自宅療養も経験した。症状は徐々に回復したが、ぜんそくの治療は続いている。
県内では7~9月、「第5波」が猛威を振るった。医療スタッフや病床の不足などで、必要な医療が提供されない事態にも陥り、自宅療養者はピーク時に1500人を超えた。
年末年始の大きな「第3波」があったのに、体制は整っていなかった。女性は自ら感染を経験し、これまでの政府の対応が「後手後手に回っていた」と映る。
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冬に向けて「第6波」の到来が危惧される中、新型コロナの医療対策は衆院選の最大の争点だ。
何度も波に直面し、感染拡大防止と経済を回すことのはざまで揺れた安倍晋三(あべしんぞう)政権、菅義偉(すがよしひで)政権の対応へ国民が審判を下す選挙でもある。
第5波では入院できず、自宅で亡くなるケースが全国で相次いだ。野党には「失政」との指摘もある。一方、自民は、ワクチン接種率が急速に上がったことなどをアピールする。
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「もし入院先が見つからなかったら、どれほど不安だろう」。7月に感染し肺炎を発症した宇都宮市、会社員男性(18)は、自宅療養中に死亡した人のニュースに触れ、危機感を覚えた。
自身は幸いすぐに入院先が見つかったが「医療崩壊が迫っている」と感じた。
ワクチン接種が進んでも変異株の影響などで、次にどんな波が来るのかは見通しきれない。「第6波への備えは急務」と思う。
選挙権を得て初めて臨む衆院選。「命を最優先に考える政治であってほしい」。1票の重みをかみしめ、投票先を見極める。