県内5選挙区のうち唯一、野党候補の一本化が実現しなかった栃木1区。候補者は前回と同じ顔ぶれだ。13期目を目指す自民党前職船田元(ふなだはじめ)氏(67)の陣営には「ほっとした」と安堵(ど)の空気が漂う。だが、船田氏本人に笑顔はない。

 10日、宇都宮市内で行われた事務所開きで船田氏は「選挙情勢は読みにくい。油断なく頑張りたい」と語気を強めた。1区は無党派層の動向が鍵を握る県都が主戦場になる。岸田新政権の支持率が伸び悩む中、警戒は緩められない。組織の上滑りを懸念する声もある。

 会場には福田富一(ふくだとみかず)知事をはじめ自民、公明の県市町議や業界団体関係者がずらりと顔をそろえた。「自公が議席を減らすといわれているが、1区で減らすわけにはいかない」。選対本部長の佐藤栄一(さとうえいいち)宇都宮市長が引き締めを訴えた。

 対するのは、2度目の挑戦となる立憲民主党新人渡辺典喜(わたなべのりよし)氏(38)。9月25日、総合選対結成式で連合栃木の吉成剛(よしなりつよし)会長が「野党の大きな勢力が必要だ」と力を込めた。が、そこに連合が支持するもう一つの野党、国民民主党の議員の姿はなかった。

 旧民主党系が分裂した立民と国民の溝は「野党共闘」の旗印の下、立民が共産党に近づくほど深まった。両党が相乗りした2020年の宇都宮市長選でも、その様相は強まった。

 一方、共産側は早い段階から「1区で一本化のメリットはない」とみていた。日本維新の会元職柏倉祐司(かしわくらゆうじ)氏(52)が立候補を表明し、立民と候補者調整をしても非自民票が分散してしまうためだ。選挙が目前に迫る今月5日、一本化断念が正式に決まった。

 各党の思惑が絡み合う中、渡辺氏は前を向く。「党派制だけの選挙とは思っていない。新しい政治のプレーヤーを誕生させる」

 柏倉氏はみんなの党、民主党、希望の党に続く四つ目の政党から4度目の挑戦。「立民と共産が一本化してもしなくても自分の票は変わらない」と独自の戦いを展開する。

 10日の選対事務所結成式には、みんなの党時代に行動を共にした元県議らが駆け付けた。陣営幹部は「9年前と非常によく似た雰囲気を肌で感じる」と期待。2区で比例復活した12年の再現を狙う。

 同日、共産党新人青木弘(あおきひろし)氏(60)は事務所を開設。ひな壇の頭上には「比例・青木ひろし」と巨大な文字が掲げられた。青木氏は「比例の大波を起こす決意」と自身の姿勢を鮮明にした。