柏木隆志医師

好酸球性副鼻腔炎で多発したポリープ(獨協医大提供)

柏木隆志医師 好酸球性副鼻腔炎で多発したポリープ(獨協医大提供)

 成人で発症し、多発した鼻たけ(ポリープ)で呼吸が苦しくなることもある「好酸球性副鼻腔(びくう)炎」。一般的な副鼻腔炎とは異なり原因不明で再発しやすい難治性で、2015年に難病指定された。長期的なステロイド治療による副作用が懸念されてきたが、ステロイドの量を低減する試みも始まっている。獨協医科大病院耳鼻咽喉・頭頸(けい)部外科の柏木隆志(かしわぎたかし)医師に症状や最新の治療法などを聞いた。8月7日は「鼻の日」。

 好酸球性副鼻腔炎は00年ごろ明らかになった新しい疾患で、14年に診断ガイドラインができた。細菌感染などを防ぐ働きをする「好中球」という白血球が増加して起きる一般的な副鼻腔炎とは異なり、アレルギー反応に関与する「好酸球」という白血球が増え、副鼻腔の粘膜に侵入して炎症を起こす。国内には20万人ほどの患者がいるとみられる。

 詳しいメカニズムや原因は明らかになっていないが、ぜんそくと合併しやすいことからアレルギーの関与が疑われている。ぜんそく患者のほか、アスピリンやロキソニンなどの鎮痛薬に対するアレルギーがある人は重症化しやすい傾向があり、注意が必要だ。中耳炎を合併し、聴力が低下することもある。

 一般的な副鼻腔炎の治療で処方されるマクロライド系抗生物質が効かないため、抗生物質で改善しない場合は好酸球性の可能性がある。

 特徴的な症状は、左右の鼻腔や副鼻腔の粘膜が腫れ上がったポリープの多発。さらに強い嗅覚障害や鼻詰まりなどにも悩まされる。嗅覚障害は時間が経過すると嗅覚を失うことがあるため、早期受診をしたい。

 診断ガイドラインでは、ポリープの有無や末梢(まっしょう)血中の好酸球率の高さなどで疑いの高さを点数化。確定診断は手術で採取したポリープにどれだけ好酸球が入りこんでいるか病理検査をしてからになることが多いという。

 治療の基本は、ポリープや粘り気の強いゼリーのような分泌物ムチンなどを取り除いて副鼻腔を空洞化する手術と、炎症を抑制するステロイド服用の組み合わせ。

 しかし「手術でポリープを除去しても再発しやすく、またステロイドを減らせば再びポリープが大きくなってしまう」と柏木医師。難治性たるゆえんだ。ステロイド内服は長期間にわたり、胃潰瘍や骨密度の低下などの副作用も問題視されてきた。

 そこで近年、ステロイドの量を減らす術後療法が一部の患者に取り入れられている。約2週間ごとに通院し、ステロイドを染み込ませた溶ける綿を副鼻腔に詰める治療だ。少量で局所的に粘膜に効くため、長期服用による合併症のリスクを軽減できる上、ポリープの再発も抑制できるという。

 柏木医師は「嗅覚の低下など生活に支障を来すことが多い疾患だが、治療によって生活の質は改善できる。手術後も根気よく、定期的に通院することが大切」と話している。