太陽からの熱で大気に流れが生まれ、雲ができ、雨が降る。海に流れ込んだ水は蒸発し、別の場所で雨が降る。大気中の熱や二酸化炭素(CO2)の一部は海に吸収され、海水の成分を変え、海流を生む▼今年のノーベル物理学賞に決まった米プリンストン大の真鍋淑郎(まなべしゅくろう)博士は、この極めて複雑な地球の気候を、可能な限り単純な方程式の組み合わせで表現し、コンピューター上に再現した▼大気中のCO2濃度を、徐々に増やしながら気候の変化を調べると、今世紀末には世界の平均気温は2度以上、高くなることを1960年代後半に報告している。実物の地球はどうだろう▼真鍋さんが想定した通り、大気中のCO2濃度は上昇を続けている。産業革命前には280ppm程度だったものが今では410ppmに達し、過去1万年以上で最も高い。既に地球の気温は1・2度上昇した▼人間は、自分たちが暮らすこの星を使って、かつてない規模の実証実験を始めてしまったと言える。気候モデルの中ではCO2濃度を自由に変え、温暖化の進行を食い止めたり、逆転させたりすることは簡単だ。だが実際の地球ではそうはいかない▼かつてない規模の干ばつや豪雨が頻発し、多くの命が熱中症で奪われる。こんな将来をコンピューターの中だけのものとするために、多大な努力を続けねばならない。