「派閥の前に党がある。党の前に国家、国民がある」。故渡辺美智雄(わたなべみちお)元副総理の言葉という。飾らない率直な物言いで、毛針やアッケラカーのカーなど物議を醸した発言も少なからずあったが、これは名言と言っていいだろう▼自民党の岸田文雄(きしだふみお)総裁が4日、第100代首相に就任し新内閣が発足した。茂木敏充(もてぎとしみつ)氏は外相に留任し、長年、財務相・副総理を務めた麻生太郎(あそうたろう)氏が党副総裁となり閣外に出たため、重鎮として政権基盤安定への責務もさらに重くなる▼新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、相次いだ緊急事態宣言などで激しく痛んだ経済をどう立て直すのか。台頭する中国に北朝鮮の核、最悪の日韓関係にどう向き合うか。新内閣には内外の難題が山積している▼早速、総選挙がある。今月19日告示、31日投開票は想定よりかなり早まった印象がある。岸田首相の自信の裏返しだろうか▼菅義偉(すがよしひで)前首相が不本意な退陣に追い込まれた最大の理由の一つは、「説明が足らない」だった。これが国民に向いているのかといった、ある種の不信感を生んだのだろう▼聞く力が特長という新首相に期待し、釈迦(しゃか)に説法の愚をあえてしたい。常に国民を意識する姿勢を見せてほしい。先月15日は渡辺氏の命日だった。もう一つ金言がある。「(政治家は)勇気と真心を持って真実を語る」。