新型コロナウイルス禍の中、世界が異常気象に翻弄(ほんろう)されている。熱波や局地的豪雨の被害は深刻化。地球が壊れつつあると実感する。誰にでも、災害の危険は忍び寄る。油断できない世の中になった▼油断という言葉。語源は諸説あるが、その一つに比叡山延暦寺の「法灯」由来がある。天台宗開祖の最澄が建立した際、世の中を末の代まで照らすようにとの願いを込めて、ともしたとされる▼以来、1200年以上、僧侶が代々、菜種油を継ぎ足している。「不滅の法灯」と呼ばれる。注意を怠ると、油不足で火が絶えることから、「油断」になったと伝わる▼「法灯」には幾たびもの危機があった。有名なのが1571年の織田信長による延暦寺焼き打ちである。火は消えてしまったが、焼き打ちの28年前、松尾芭蕉の句で知られる立石寺(山形県)を再建する際に分灯していた。焼き打ち後、延暦寺に再分灯により戻された経緯がある▼結果的に、分灯はリスクヘッジ機能を果たしたことになる。今も尊火として信仰を集めている。その史実は現在の災害対策にも生かせるのではないか。次善の策を巡らせておく防波堤の役割として▼厄災は突然、牙をむいて襲いかかる。食料・飲料水の備蓄など、一人一人が事前に準備できるものがある。日頃の油断のない心掛けが欠かせない。