この季節、田んぼのあぜや川の土手に、深紅のヒガンバナが固まって咲く。自分たちの存在を隠していたのに、急に茎を高く伸ばして「ここにいる」と自己主張するかのような立ち姿だ▼群れる花は、自民党総裁選に似ている。告示直後から、4人の候補がテレビや新聞に次々と登場、メディアジャックとまで評された。自民党改革を口々に訴え、この国が抱える緊急の課題について意見の披歴が続いた▼よく言えば、多士済々なんだろう。だが、かなり違和感がある。問題があるのなら「どうして安倍・菅政権の時代に提案しなかったのか」と▼この政権は政治主導の名の下に人事で官僚を支配し、首相らへの忖度(そんたく)を重ねさせた。自民党内でも、安倍晋三(あべしんぞう)氏ら実力者が人事と公認で政治家を縛り、自由闊達(かったつ)な意見交換を封じてきたのだろう▼活発な論戦も後半は、実力者への忖度が目立ち、尻すぼみとなった。岸田文雄(きしだふみお)前政調会長が総裁に選ばれ第100代首相になる。安倍氏の後押しもあったことから、安倍・菅政権の9年間を厳しく総括することは難しいだろう▼ヒガンバナの咲く様子を「地面のしたに棲(す)むひとが、線香花火をたきました」と表現したのは詩人の金子(かねこ)みすゞだ。改革の議論が、次の総裁選まで封印されるとすれば、この例え話のように線香花火で終わることになる。