世界的ピアニスト、舘野泉(たてのいずみ)さん(84)は2002年に脳出血で倒れ、右半身不随となった。2年半の闘病後「左手のピアニスト」として再起し、国内外で活躍している▼チェリストで小山市間々田出身の父と、ピアニストで仙台市出身の母との間に都内で生まれた。自宅は1945年4月の東京大空襲で焼夷(しょうい)弾の直撃を受けて全焼し、終戦まで父の実家に疎開した▼公式ホームページ(HP)の小自叙伝には「はだしで田畑を駆け回り、蚕と同じ部屋に寝起きしたその数カ月は、私の人生で計り知れぬ大きな(肯定的な)重みを持っている」とつづっている▼これまでリリースされたLP、CDは130枚。分野にこだわらず、常に新鮮な視点で演奏芸術の可能性を広げて不動の地位を築いた。病に倒れ、復活した舘野さんにささげられた左手のための作品は、10カ国の作曲家から100曲にも及ぶ▼来月2日、那須クラシック音楽祭実行委員会の招きでフルート奏者山形由美(やまがたゆみ)さん、バイオリニストの長男ヤンネ舘野さんと共に、那須野が原ハーモニーホール(大田原市)で演奏する▼ホールHPには「父が生まれ育ち、私もしばしば訪れた地に近く、そこで息子と演奏ができることはなんともうれしい」とメッセージを寄せている。左手一本で奏でる豊かな音は聞く人を魅了するだろう。