国内でも今月、新型コロナウイルスワクチンの接種を2回終えた人の割合がようやく5割を超えた。単純に政権の手柄とすることはためらわれるが、歓迎すべきニュースには違いない▼日本を含む先進国では、一定期間後に3回目の接種をしてさらに防御力を高める「ブースター」の議論も進む。一方で置き去りにされているのが、発展途上国へのワクチン支援だ▼ワクチンを途上国に供給する国際的な枠組みとして世界保健機関(WHO)などが主導する「COVAX(コバックス)」がある。供給は十分に進まず、中低所得国では1回目の接種を終えた人ですら今月時点で20%にすぎない▼途上国で接種が進まず、感染拡大が長引くほど、ワクチンが効かない変異株が生まれ、先進国も脅かす恐れが強まる。WHOは声明で、「全員が安全になるまで誰も安全ではない」と訴えた▼英誌エコノミストの調査部門は、途上国での接種の遅れが世界にもたらす経済損失は2.3兆ドル(約250兆円)に上ると警告する。途上国に対する先進国の無関心の代償は、とてつもなく大きい▼ヘレン・ケラーは自伝で「科学は大半の害悪への解決策を発見したかもしれないが、人間の無関心という最も恐ろしい悪への治療法は見つかっていない」と記した。コロナ禍で、改めてかみしめたい言葉だ。