退陣する菅義偉首相は、新型コロナウイルス対策で「自滅した」とも評されている。ワクチン接種への過度な期待や、社会・経済活動を早期に回復させたい前のめりな姿勢が、要所で判断を鈍らせたのだろう。

 刻々と状況が変化するコロナ禍で、首相の深い苦悩は計り知れない。しかし、危機対応は緩慢で場当たり。あまりに楽観的だった。苦い経験や反省は生かされなかった。専門家らの知見が政策に強く反映されず、政治的解釈に変換された。

 揺れ動く国民感情の機微も読めなかった。東京五輪・パラリンピックの開催前には、説得力に乏しい「安全安心」を繰り返すばかり。まるで念ずれば、かなうかのように。「明かりははっきりと見え始めている」。8月の記者会見での発言は、世論や医療の現状との大きなずれを強く印象付けた。

 出口戦略は新政権の大命題。まずはコロナ禍の政権2代の失策を受け止め、闘い方を練り直してほしい。見え始めた「明かり」は、いつの間にか消えることもある-。菅政権が残した大きな教訓である。