先日の東京オリンピックのスケートボード競技で、西矢椛(にしやもみじ)さんが史上最年少の金メダルの栄冠に輝きました。おめでとうございます。

 ニュースで知った情報ですが、英国放送局BBCの記者が「13歳の女の子が五輪で金メダルを獲得した。私はその歳のときは1人で外出することさえ許されていなかったと思う」と驚嘆したとのことです。

 ここから連想した、私のシアトル在住時の思い出を話します。当時驚いたのは、州ごとにその束縛の程度は違いますが、「アメリカでは保護者のいない状態で子どもは外出できない」ということです。

 同様に、子どもだけで家で留守番することもできません。シニア世代の方に聞くと、自分が小さい頃はもっと自由だったのだが、誘拐や児童虐待を防ぐためにこうなってしまい、寂しい思いもあるとのことでした。「日本は子どもが自分で歩いて登下校します」と伝えると、大変驚かれ、また治安の良さを称賛されます。

栗原さんが在米時に実際に受信したアンバーアラート。事件が発生した地域などが表示される(画像は一部加工しています)(栗原一貴さん提供 )

 ある日突然、携帯電話に緊急地震速報のような警告通知「アンバーアラート」が来たことがありました。

 これは児童誘拐事件と行方不明事件が発生した場合に、警戒と早期解決のため周辺地域に発せられるもので、このような人災に対し緊急警報が来ることにカルチャーショックを受けました。

 いかに児童誘拐が身近であり、社会がそれに法的・システム的な対策を本気で講じているのか。思い知らされます。

 さて、子どもが1人でいられないアメリカで、私たちの生活はどうなるでしょうか。

 通学は当然としてちょっとした買い物、役所での手続き、通院、放課後の習い事や友達との遊びにいたるまで、シッターを雇わない限りは常に親が同伴します。

 親としては結構きついと感じますし、子どももいちいち親の都合で自分の関係ない用事に連れ回されて退屈でしょう。

 ただ、子どもが小さいうちはまだ想像がつきます。しかしこれが、思春期になってもまだ続くのです。親も子もお互いに気まずいでしょうし、思春期に子どもが親の監視を離れて創造性や独自性を育むチャンスを、犯罪リスクと比較して諦めてしまった「自由の国」があるということは、私たちの心をざわつかせます。

(栗原一貴(くりはらかずたか)・津田塾大教授)