住宅周りなど街の中でもよく目にするイチジクの木。花を咲かせず実がなるため「無花果」と書く。実際は実の中に花があるそうだ。これから10月中旬までが秋物の旬で、口中に広がる上品な甘さが特徴だ▼県南部を横断するとちぎ渡良瀬いちご・フルーツ街道の中心的存在である佐野市。市内のフルーツライン沿いには、ナシやモモなどの直売所が立ち並ぶ。その県内きっての果物どころで、イチジクの栽培が拡大している▼地域の新たな園芸作物として、JAや県安足農業振興事務所など関係者らが協議して2015年に新規導入し、翌年、JA佐野に栽培研究会が発足した。5戸でスタートした栽培農家は現在、15戸に増えている▼20年の栽培面積は当初の4倍の140アール、出荷量も5倍強の7.9トンと順調に拡大している。ただ、生産者数は頭打ち状態。特に若手の参入が課題で、JA佐野が呼び掛けを続ける▼イチジクの生産が盛んなのは西日本で、鮮度落ちの早さが欠点の果肉には輸送が大きな壁となる。身近で作られれば、消費者はよりフレッシュな物が食べられる。首都圏など大消費地に近いメリットもある▼雨や寒さに弱い半面、作業が比較的簡単なのが栽培面の長所だという。既に農福連携の例があるほか、高齢者向けとしても魅力がある。新たな名産品に育つといい。