(右)関東・東北豪雨で浸水した杉本さんの自宅庭の周辺。広範囲で被害が出た(杉本さん提供)、(左)平時の杉本さんの自宅庭。周辺には水田が広がる=8日午前、小山市押切

 県内で死者3人、住家浸水5106棟など甚大な被害が出た2015年9月の関東・東北豪雨から10日で6年となった。地域一帯が浸水被害に遭った栃木県小山市押切の住民有志28世帯は、安全な場所への集団移転に向け準備を進めている。被災後、出水期になる度に浸水への不安がつきまとうという。市は2032年度に移転を完了させる計画案を提示しているが、有志は「完了まで12年は長い。1日も早く移転したい」として、勉強会を重ねている。

 水田地帯が広がる押切は永野川と巴波(うずま)川、杣井木川(そまいぎがわ)の3川が合流する最下流部の近く。市の災害記録によると、押切を含む流域の寒川地区は関東・東北豪雨で住宅58棟が浸水した。19年10月の台風19号の際も広範で浸水被害に遭った。

 「毎年6~10月は生活が落ち着かない」。集団移転を望む住民でつくる「押切杣井木川被災者の会」の代表杉本勝彦(すぎもとかつひこ)さん(53)は被災以降、日常が一変したという。

 自宅1階が腰の高さまで水につかり、「一晩で計り知れないものを失った」。大雨の予報を耳にすれば、必要な家財を2階に上げ、数台の自家用車を別の場所へ避難させるのが習慣になった。「空振りならそれでいい」。自分に言い聞かせるが、その度に精神的な負担が積み重なっている。

 集団移転は、市が昨年秋に開いた住民説明会で、排水強化対策の一つとして提案した。杉本さんは「もう住んでいられないという秘めた思いをまとめるタイミングだった」と振り返る。旗振り役となって住民の意見をまとめ、今年2月、集団移転を望む25世帯(当時)の総意書を市に提出した。

 5月以降、会員や市の担当者が出席する勉強会を2度開催した。国の補助を受けて市が進める「防災集団移転促進事業」の活用を目指しており、国が定めたガイダンスを確認してきた。

 杉本さんによると、市から12年間に及ぶ移転計画案を提示されており、今後は計画の短縮が可能かなどを協議していくという。

 「やっとここまで来た」と胸をなで下ろす杉本さん。「早く安心して生活したい」と祈るように話した。