子どもの頃“秘密の水場”を持っていた。田舎の里山を仲間と思う存分駆け回った後に飲む、岩場の澄み切った湧き水は最高で、無限に飲める気がした▼栃木市にグループの生産拠点・梓(あずさ)の森工場を置く、サントリーホールディングスの福本(ふくもと)ともみ執行役員(62)が、しもつけ21フォーラム8月ウェブ特別例会で講演した。「水は一番の経営資源」との説明を聞き、半世紀前の記憶がよみがえった▼良質な水を抜きに同社の事業は成立しない。そこで2003年に着手したのが、各地の水源を守る「天然水の森」活動である。15都府県の21カ所、地中に水をためる森林整備の面積は約1万2千ヘクタールに及ぶ▼本県は日光市所野の「霧降県有林」約154ヘクタールで、シカの食害とササの繁茂による林床植生の単調化が課題という。ササを刈り、土の中に眠っている種から植物を発芽させる。そして柵を作りシカの食害を防ぐ▼一連の活動について、福本氏は「くみ上げる2倍以上の地下水を育むため」と解説した。ボランティアや企業の社会的責任といったものではなく、基幹事業であり、成長戦略であるという▼水の大切さは、だれにとっても同じだろう。幸い本県は今も水資源に恵まれているが、永遠に続くとは限らない。講演を聴いて不安になった。県内の水を守る取り組みは大丈夫だろうか。