競技用車いす「レーサー」を操り、トラックを疾走する選手たち=31日午前11時50分、オリンピックスタジアム

 最終コーナーを回り、3輪の競技用車いす「レーサー」が勢いを増してぐんぐん加速する。前傾姿勢で懸命に車いすをこぐファイナリスト10人は、疾風のようにゴールを駆け抜けた。

 東京パラリンピック第8日目の31日午前、国立競技場で行われた車いすの男子1500メートル決勝。「銀色の弾丸」の異名を持つスイスのマルセル・フグ選手(35)が、2分49秒55の世界記録を樹立した。この記録は、東京五輪金メダルの3分28秒32を優に上回る。

 軽量化により高速の走りを実現する車いす、反発力のある「板バネ」を使った義足-。世界記録誕生の瞬間を何度も目の当たりにし、競技に特化した「ギア」の進化を実感する。先天性の病や事故などで失った力を最新技術で補い、選手たちは限界に挑んでいる。

 激しくぶつかり合う車いすバスケットボールは、前面に設置された強固な「バンパー」で体と車体を衝撃から守る。競技の特性や選手の個性に合わせた究極のカスタマイズにも注目だ。

 県勢が活躍する車いすテニスは、ハの字型に傾いた車輪でターンなどの回転性能をアップ。「乗りやすさをとことん追求したい」。那須塩原市出身の真田卓(さなだたかし)選手(36)も改良を重ねた「相棒」とともに、大舞台で活躍を続けている。

 五輪を超えるパラリンピックの記録に対し、一部には「技術ドーピングだ」とマイナスの声もある。しかし、肉体との高い次元での融合は、日々の鍛錬と使いこなす技術があってこそ、生まれる。ギアを「体の一部」にまで昇華させた選手の躍動に、感嘆せずにはいられない。